■ サン セバスチャンSan Sebastian*/ドノスティアDonostia

バスク地方Pais Vasco(バスク語でエウスカディEuskadi)を初めて訪れた私は、サン セバスチャンSan Sebastian*(バスク語でドノスティアDonostia)の風景にとても驚かされた。街を歩くと目に入るのは、緑が瑞々しい街路樹、最上階が斜めになって出窓のある集合住宅、そして色の落ちついた青い海。私には、スペインというよりは、どことなくフランスを連想させる光景だった。

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そんな街を歩きながら、1泊15ユーロの窓なし部屋のペンシオンPensionを今晩の宿に決めると、さっそくBARバルへと飲みに出た。一軒、二軒とビールを飲みながら廻ったが、その店々のビールの看板も、スペインではあまり見慣れないアイルランドのビールのものが目に付く。

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三軒目に、とても楽しいBARに出会った。カウンターには、ピンチョスやボカディージョがズラリと並べられている。頼んだワインのグラスを置く隙間がないくらいにギッシリだ。加えて、カウンターに並べられたもの以外にも調理した料理が多数あり、その味にとても満足した私は、あっという間に3皿を平らげた。

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お腹もすっかり満たされ、海沿いを散歩していると、さっきまで快晴だった空が急に暗くなり、雨が降り出した(思えば、この後の旅の道中しばらく続く雨の始まりだった)。私はあわてて、港の脇にあるBARに入った。かつての漁師小屋を改築したようなその店で、さっそくビールを頼む。入ったときには他に客はいなかったが、続いて常連と思しき客が入ってきて、“Paquitoパキート”と注文している。Paquito・・・? 聞いたことのない飲み物に、店のオヤジに何かと尋ねてみる。
「Paquitoって何ですか?」
「ラム酒の入ったコーヒーにミルクを入れたものさ」
ラム酒入りコーヒーは、スペインではカラヒージョcarajilloと呼ばれる。
「カラヒージョcarajilloにミルクを入れるとPaquitoなの?」
「いや、ここだけの話でね」
「サン セバスチャンではそう呼ぶの?」
「いや、この店の、このお客さんだけに通じる、オリジナルのレシピでつくるカラヒージョのことさ」
「・・・!」
そのレシピを教えてもらいながら、さっそく注文した“Paquito”は、雨で冷えた私の体を暖めてくれる。美味しい・・・。
Paquito。
特定の客とオヤジにだけ通じる、特定の注文。私はこの店で、また一つBARの魅力に触れたように感じた。

●サン セバスチャンで食べたピンチョス/タパス
ボルサ デ マリスコスBolsa de Mariscos(魚介リゾットのボール状のフライ)、タマゴ・ハモン・ベーコンのラザニア、赤ピーマンのつめもの、豚足の卵包みの煮込み

 

飲んだのは、ビールcervezaを3杯と、チャコリtxacoli/chacoliを2杯、ロゼvino rosadoを1杯。それにカラヒージョcarajilloを1杯。

 

翌朝の朝食ももちろんBARで。カフェ コン レーチェに、ツナ・トマト・タマゴ・レタスのホットサンド。味がしっかりしていて、これがまたとても美味しい。となりの客は、黒いボトルから注がれる色の濃い酒を朝から引っ掛けている。何かと聞けばモスカテルmoscatelであった。同じものをと頼むと、BARの兄さんが一杯おごってくれた。ありがとう

 

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*San Sebastianのianは”ián(アセント有)”。

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